生物多様性あれこれvol.2 魚よ、川を分断するダムをかけあがれ!

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生物多様性あれこれ

Vol.2:魚よ、川を分断するダムをかけあがれ!~ダムの上下流をつなげる役、魚道~

過去のコラムはコチラ⇒vol.1:絶滅危惧種は本当に貴重なのか?

購読者の皆様こんにちは、エコ・リーグ/生物多様性わかものネットワークの篠原です。
今回は、川の魚に関するテーマをご紹介します。

―魚道とは?―

ダムはみなさんもよく知っているかと思いますので詳しい説明は省きますが、
洪水が起きた時の水量調節や飲料水の獲得など多様な機能を持っており、
私達が安全な生活をおくれるために大きな役割を果たしています。
そんなダムですが、川を分断して造られるために、川を移動する魚にとっては邪魔なことこの上ないです。
そんなダムに魚が移動できる道を造ろうと生まれたのが「魚道」というものです。
詳しくは以下のサイト等に紹介されていますので是非ご覧ください。
北海道宗谷総合振興局「魚道の種類」:
http://www.souya.pref.hokkaido.lg.jp/ss/nss/GyodounoShurui.htm

―魚が通らない!?~魚道の抱える課題~―

ダムで分断してしまった代わりに、別の道を造ることで魚が移動できるようになるのが魚道なのですが、
世の中どうもそんなに甘くないようです。
そもそも魚が通ってくれない・・・
どうやらただ魚道を造ればいいというものでもなさそうです。魚道の課題としてよくあるのが

・そもそも魚道に川の水が入らない

・魚道の入り口が魚にわかりにくい

・魚道の流れが速くて魚が泳ぎきれない

などです。そこで最近は「魚道を造る」ことのほかにも「魚道をなおす」という仕事が求められています。

―実際に魚道を見てみよう!―

ということで、今回も実物を見に行きましょう!今回は岐阜県にお邪魔しようと思います。

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ここは岐阜県高山市にあるダムです(正確には砂防堰堤というものです)。
このダムの横に魚道があるのですが・・・

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水が流れていない・・・

この魚道、実は上流側で土砂がたまってしまい、水が流れなくなってしまったのです。
これではせっかく造った魚道の意味がありません。
そこでこの魚道では水を流すための修復工事が行われていました。
その結果・・・

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水が流れているではありませんか!?(1つ前の写真と少し場所は違います)

上流側の土砂をとるなどの工事によって、今まで使えなかった魚道が、
その機能を取り戻した一例といえるかもしれません。
ちなみにこの魚道は魚が移動するための工夫がたくさんみられる魚道でもあります。

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▲魚道を迂回させて造り魚道の勾配をゆるくすることで、魚がより移動しやすくなっています。

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▲魚道内に石や植物を導入することで、魚道内に魚の隠れ場ができます

―人と魚が共存できる川づくり―

ダムがなければ、人は洪水や飲み水不足などに悩みながら生きることになり、
ダムがあれば、魚は川を移動することができず餌や繁殖に悩みながら生きることになります。
どちらが大事なのか、などの問いはすぐには答えが出ないと思いますが、
魚道という役割がその問いに対する1つの答えなのかもしれませんね。

以上、「生物多様性あれこれ Vol.2:魚よ、川を分断するダムをかけあがれ!~ダムの上下流をつなげる役、魚道~」
でした。次回をお楽しみに!

執筆・写真:篠原 光礎(NPO法人エコ・リーグ/生物多様性わかものネットワーク)

過去のコラムはコチラ⇒vol.1:絶滅危惧種は本当に貴重なのか?

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